クマよ


『クマよ』 星野道夫 文・写真
福音館「たくさんのふしぎ傑作集」より
:星野さんのクマの写真とその写真のメモをもとに作られた絵本です。
いつか おまえに 会いたかった
遠い子どもの日
おまえは ものがたりの中にいた
ところが あるとき
ふしぎな体験をした
町の中で ふと
おまえの存在を 感じたんだ
電車にゆられているとき
横断歩道を わたろうとする しゅんかん
おまえは
見知らぬ 山の中で
ぐいぐいと 草をかきわけながら
大きな倒木を
のりこえているかもしれないことに
気がついたんだ
気がついたんだ
おれたちに 同じ時間が 流れていることに
(中略)
もう何日も
おれたちは 同じ森の中で
ねむっている
しーんとした 夜のしずけさの中
カサカサと ジネズミが
落ち葉の下を動いている
タッタッタと カンジキウサギが
木々のあいだを 走ってゆく
おまえのすがたも 見えないが
その気配が わかるんだ
もう何日も
おれたちは 同じ森の中で眠っている
夜になると すこし こわいんだ
どこかに
おまえがいると 思うだけで
テントの中で
じっと 耳をすましてしまうんだ
でも そんなとき
ふしぎな気持ちになるんだよ
おれは
遠い原始人になったような気がして
おれは
動物になったような気がして
夜になると すこし こわいんだ
でも
そのふしぎな気持ちが 好きなんだ
by angelglobe | 2005-10-04 14:09 | ライブラリー | Trackback


